９９枚

　No.99 BRINGING IT ALL BACK HOME-The Influence of Irish Music （1991年）　

　１９６３年４月３日、ゴールウェイでのジョン・Ｆ・ケネディ大統領の「晴れた日に、港へ行って西を見ればボストンが見える。そこには親戚がいる。」という感動的なスピーチで幕を開ける『BRINGING IT ALL BACK HOME』。
　「１９９０年、アイルランドの伝統音楽の再検証と、アイルランドとアメリカの音楽的ミッシング・リンクを埋める為の壮大なプロジェクト“ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム”が発足。計５時間のテレビ・ドキュメンタリー、それらに使用された音楽トラックを抜粋した２枚組ＣＤ。・・・もはや音楽史の中でも認知と確立が成された“アイリッシュ・ミュージック”の原点と称された音楽抒情詩である。」（ＣＤ解説より）
　ドーナル・ラニーが音楽監督を務めたこの一大抒情詩、ドーナル・ラニー、エルヴィス・コステロ、シャロン・シャノン、メアリー・ブラック、ポール・ブレディ、ドロレス・ケーン、エミルー・ハリスなど、愛米の実力派ミュージシャンたちが華麗な演奏を披露しています。　その中でも聴いていて涙が止まらないナンバーが２曲あります。
　１曲目は、「NOTHING BUT THE SAME OLD STORY／Raul Brady」
　希望を抱いてロンドンに渡った青年が、ロンドンの最下層で蔑まれながら厳しい肉体労働に耐える毎日を送る不条理へ、怒りをぶつけるように歌うポールのナイフのような鋭い歌声に涙を禁じ得ません。ポールのギター弾き語りに、ドーラルがブズーキで伴奏を付けています。　２曲目は、「KILKELLY／Robbie O’Connell」
　アメリカに渡ったきり帰ってこない息子に宛てて手紙を書く父親、手紙には家族の誕生や死といった近況、土地の売買価格、農作物の不作などが綴られ、アイルランドに残された家族が息子を気遣い愛していることを繰り返し述べています。そして３２年後の最後の１通は、弟から兄へ、父の死を知らせる手紙でした。
　この作品は、実際に発見された手紙の束によってつくられました。最初から最後まで、涙が止まりません。ロビー・オコンネルのギター弾き語りに、ミック・モロニーのフラット・マンドリン、ジミー・キーンのアコーディオンが加わります。